チームで高め合う「酒造り」を
歴史を感じさせる蔵の中に一歩足を踏み入れると、そこは珍しい9トンタンクなどが並び、手造りへのこだわりを目の当たりにする。
この、滝沢本店の造りを総指揮を採るのは、杜氏である高橋正四郎氏である。
昭和53年に東北の蔵元で酒造りを始め副杜氏となり、現在はここ滝沢本店にて杜氏を務めている。
平成21年まで千葉県杜氏会にて副会長も務めており、数々の実績や受賞暦を知るほど流石は滝沢本店の杜氏だと感じる。
我々はその高橋氏にお話を伺うこととなった。
「東北の蔵と関東の蔵にて酒造りを行われてきましたが、高橋氏が共通して気をつけているポイントなどはございますか?」
「そうですね、蔵が違えば酒も違う、地域という部分も影響します。東北では味の濃く甘いお酒が好まれますが、関東ではスッキリとした味わいのお酒が好まれます。それぞれの地域に合った酒造りをするというのが、共通した大切な部分です」
そういえば、取材に来る途中にて成田参道を歩いている際、ほとんどのお店に長命泉の樽やポスターが飾られているのを見た。
地域で愛される酒造りをする重要さが伝わっているのだ。
次に滝沢本店の酒造りの特徴を伺った。
「水は医学的にも身体に良いと言われる弱アルカリ性の井戸水、滝沢本店を有名にした歴史ある水を使っています。米に関しては、吟醸美山錦をベースに品種開発された千葉県産の総の米、大吟醸には山田錦、純米吟醸には100パーセントの雄町米を使っています。米にも癖の無いもの、香りよいものなど様々、酒に合わせた厳選をしています」
現在高橋氏を含めた5名で酒造りを行っている滝沢本店。そのチームの特徴を聞いてみた。
「仕事をするっていうのは、どこでやっても誰とやっても同じだと思うんですよ。同じ目標をチームで共有できれば、あとはいくらでも意見の発言や交換は自由としています。そうすることにより、個々は高め合っていけますし、結果、いい酒を造るという同じ目標に近付いていくんです」
同じ目標をチームで共有し、あとは自由に高め合う、素晴らしい体制である。
「たくさんの人に愛される酒を造らなきゃならんですよ。その為にはいろんな年代やいろんな考えを融合していく必要があります。それを各蔵が取り組むことが、業界を高め合うことに繋がるんです」
最後に高橋氏が真剣な眼差しで発してくれました。
そうなんです、昭和50年代に比べ、現在日本酒の売上は3分の1なのだ。それを打開する為には、各蔵の強い思いを業界の強さに変えていかなければならない。
滝澤尚二社長の発想力を高橋氏がチームを率いて形にしていく。役割がそれぞれなだけで全員の想いは同じ。男としてこのモノ造りの姿勢に熱くならない訳がない、今回の取材で感じた滝沢本店の想いを味わいたい、酒から感じ取りたい。そんな酒の呑み方をしたくなった熱き取材であった。